長嶋茂雄の真実2~キュウさん

キュウさん~グラウンドキーパー~

後楽園球場の名物男に「キュウさん」と呼ばれていたグラウンドキーパーがいた。

このキュウさんは、黒ポカという土の混入具合から内野手の守備エリアの土の状態まですべてを知り尽くしていた。

長嶋が巨人に入団して数年の間、キュウさんたちグラウンドキーパーの控え室は右翼ポールぎわのスタンド下にあった。ホームチームの選手たちの出口もこの控え室のそばの外野スタンド下にあった。

試合が終わってグラウンドを引き揚げるとき、長嶋はいつもここでキュウさんとグラウンド談義に花を咲かせた。素足で踏む土の感触を大事にする長嶋らしいと言えばそれまでだが、縁の下の力持ちといえるグラウンドキーパーたちを無視せず、その道のエキスパートとして対等な立場で接したのが長嶋だった。裏方さんたちを顎でこき使うのがあたかもエラくなった者の特権のように錯覚する人間の少なくないなかで、その点でも長嶋は異色だった。

キュウさんは後楽園球場が人工芝に生まれ変わる前に亡くなったが、今でも長嶋は、ときおりその当時のことを懐かしんでいる。

 

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